タンゴの「花形楽器」
バンドネオンはタンゴの演奏に欠かすことのできない、タンゴの「代名詞」と言える楽器です。アルゼンチンの首都ブエノスアイレス、男女が抱擁しながら情熱的に踊るアルゼンチン・タンゴのダンスの音楽はバンドネオンの音色と切り離すことができません。
「骨董品」扱いだったバンドネオン
タンゴの花形楽器であるからアルゼンチンで作られたと思われていますが、実はドイツで発明され作られた楽器です。旧東ドイツ、チェコとの国境近くの山合いの村で作られていました。もともと大量生産できない手作りの楽器だったことに加えて第二次大戦後生産がストップしてしまったため、「骨董品」的な楽器となり手に入れるのが困難な楽器でした。
「復刻版」バンドネオンの誕生
戦後、アコーディオンメーカーをはじめ世界各地の楽器製作者がバンドネオンを製造しようと試みてきましたが、評判の良いものはなかなか現れませんでした。近年ドイツが国を挙げて新しい「復刻版のバンドネオン」を作ろうとバンドネオンの生地に学校を設立し、アコーディオンを製作している職人に復刻版のバンドネオンを作らせました。この「復刻版のバンドネオン」が奏者からも聴衆からも高評価を得て、現在インターネットでも注文することができる状況となったのです。
「悪魔の楽器」バンドネオン?
バンドネオンには左右にボタンが全部で71個ついてますが、その配列は不規則です。さらに、同じボタンでも蛇腹を押したときに出る音と蛇腹を引いたときに出る音が異なるのです。ちょうどパソコンのキーボードがABC…と隣り合っていないようにバンドネオンもドレミがランダムに配置されているのです。するとドレミファソラシドの音階も押した時と引いた時で配列が異なるので①押しの右手②押しの左手③引きの右手④引きの左手…と四種類の操作を覚えなくてはいけません。このような理由でバンドネオンは演奏するのが難しいということで悪魔が作った楽器?と囁かれることもありました。このように書くと演奏するのが大変な楽器と思われてしまいそうですが、これもまたバンドネオンの魅力の一つです。ボタンの配列が不規則なゆえに、かえって体で習得することが求められるため、一度覚えてしまえば自然にそのボタンに指が行くようになり楽器との一体感が生まれ歌うように奏でることができます。
「教会用携帯オルガン」として開発されたという説も
バンドネオンはアコーディオンとは音色が異なります。バンドネオンの音色を言葉で表現するのは簡単ではありませんが、憂いのある独特な響きがあります。バンドネオンは、パイプオルガンのない小さな教会などに持ち込んで演奏できるように作られたという説があります。バンドネオンはタンゴの楽器というイメージが強いのですが、バッハの曲などバロック音楽やクラシック音楽を演奏してもとても美しく響きます。